食とサステナビリティ(2)

先日のお話の全文に加筆したものを掲載させていただきます。

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2016年6月27日「未来lifeセッション@NECソリューションイノベータ」インスピレーショントーク:佐々木薫

皆さん、こんばんは。佐々木薫と申します。

お話に入る前に、近々のニュースをお伝えさせてください。

1つめは、今年のODNJ(組織開発ネットワークジャパン)の大会のテーマは「イノベーション」ですが、そのメインゲストの一人が、サステナビリティ経営を行なっている多国籍企業のトップです。その他の大会コンテンツを見ても、「イノベーション=サステナビリティ」という概念が一般的になってきたのだなあと思いました。

2つめは、きのうJICA(国際協力機構)のSDGsの勉強会に行ってきたのですが、国連や政府側の若い研究員の発表者が、「企業にSDGsを考慮に入れた経営戦略を実行してほしい」ということを、熱く語っていました。ということで、経営とサステナビリティは切っても切れない関係にあると認識される時代が来たことをひしひしと感じて、また今日集まられた企業の皆様の興味のあるところかと、二つご紹介させていただきました。

さて、私は何かの専門家ではなく、何かを長年やってきた一般の人として来させていただいています。つまり、「何かについて詳しく知っている人」ではなく「俯瞰している人」として話をお聞きいただければと思います。

ではまず、今日なぜここにいるのかという背景をお話させてください。

私は、大学生の時にベジタリアンになりました。その頃、ベジタリアンは日本にほぼいなかったので、「何かの宗教ですか?」と聞かれていました。(笑) きっかけは故郷にいたベトナム帰還兵のアメリカ人に出会ったことで、ベジタリアンだったその人の影響を受けました。その後、食肉用の家畜を育てるには、膨大な穀物と水が必要であることを知りました。すでに世界各地の飢餓が問題になっていたので、ますますベジタリアンである価値を理解するようになりました。つまり、お肉よりも穀物そのものを食べる方が、はるかに効率がいいということです。

25年ほど前に、ジョン・ロビンスという人が書いた『エコロジカル・ダイエット』という本が日本で出版されました。著者は誰でも知っているアメリカのアイスクリーム会社の創業者の御曹司だと聞いていますが、その人が酪農業界の裏側を暴いたんです。その本との出会いも、衝撃的でした。

前後しますが、‘88年に上京した翌年、ブラジルアマゾン熱帯林と先住民の支援活動にかかわることになりました。イギリスのスティングというロック歌手がはじめた団体です。その頃はNPOというのはなくNGOと呼ばれる時代で、国内のことを扱う団体は少なくて、おもに海外援助を行なっていました。日本では地球の友やWWFも始まったばかりで、みんな仲間ですから情報が集まってきます。活動の情報だけでなく、自然食(その頃は「オーガニック」とは呼んでいなかった)や自然療法の情報もありました。日本で最初のフェアトレードを始めたのもその頃の友人たちです。そんな中で、「何を、どのように食べるか?」ということを考えてきました。

そしてぐっと時代は飛んで、最近はなぜか国連づいていまして、数年前から生物多様性条約会議に参加している友人の手伝いをしていて、今年4月にはカナダで開催された生物多様性条約締約国会議準備会合の一つに、彼女の通訳としてNGOメジャーグループという立場で参加しました。昨年は、仙台で行なわれた国連世界防災会議の女性メジャーグループでお手伝いをしました。防災とサステナビリティは一見関係ないと思えますが、気候変動と防災は深い関わりを持っています。

*メジャーグループ:国連における政府・国際機関以外の参加グループで、企業及び産業、子ども及び青年、農民、先住民族、地方自治体、NGO、科学・技術者、女性、労働者及び労働組合等のグループ参加が重視されており、各グループの調整機関としてステークホルダーフォーラムが設置されている。

そういう経緯で、今日ここにお招きいただいたというわけです。

「食とサステナビリティ」に関しては、3つの要素があると思います。

まずは、「自分のために選択する」。自分の体・心・スピリットのために、誰もが食物を選びますし、満足感や安全性を考えます。このことについては、多くの方がふだんから考えていると思いますので、今日はあまりお話しません。

二番目に、「地球または環境のために選択する」。それを聞いてまず頭に浮かぶのは、農薬や水の問題でしょう。きのう初めて知ったのですが、「バーチャルウォーター」という概念があるそうです。食物を輸入する場合、その農産畜産物を育てるのに要した水を輸入しているのと同じことになる、というものです。その他に、生物多様性のことを知るにつれ、外来種の問題、受粉の問題その他、たくさんの問題があることがわかってきました。

三番目は、「“つながり”と“多様性”」です。人間は一人で生きているのではありませんが、それは自然も海も森も同じです。食もそうです。どこかで互いにつながり合って、有機的に生きています。私は東京の西の端の高尾というところに住んでいて、近所に何人も有機野菜を作ったり売っている知り合いがいたり、自然食品屋さんがあったり、それぞれ小さな畑をやっていてわからなくなると教え合ったり助け合ったりしています。高尾にはそうしたコミュニティーがありますが、都会ではそういう生活はちょっと難しいかもしれませんね。

小田原に、耕作放棄地のみかん畑を受け継いでみかんを育てている「かなごて未来ファーム」という市民グループがいます。その人たちは、エネルギーにも取り組みながら、作物も、えごま・たまねぎ・ひまわり、そして今年からはお米と、活動を広げていっています。もちろんすべて無農薬です。私は年に数回ですが、みかんのお手伝いに行っています。その人たちの活躍が嬉しいし、やってる人もお手伝いに行く方も、家族ぐるみで参加します。そして、険しい斜面での重労働をご高齢となられた農家さんが続けるのは不可能だと、身に沁みてわかりました。

また、琵琶湖の野洲市というところで、無農薬なだけでなく琵琶湖の水質改善と湖魚の助けにもなる「魚のゆりかご米」というお米を作っている堀さんという方のお手伝いにも、たまにですが行っています。さきほどのカナダに一緒に行った友人曰く、「農薬を使うな、でも価格を上げるな、というのは、ムリ。無農薬だと手間がかかるというならば、お手伝いに行きましょう!」ということで、みんなで手伝ってみんなで買って食べています。私の地元の友人たちの飲食店や保育園でも、そのお米を使っています。お手伝いに行くと農作業だけでなく、そこの人々の豊かな暮らしを見たり、堀さんのご家族と一緒にごはんを食べたり、おしゃべりしたり、おばあちゃんが作った野菜をいただいたり、様々な立場から琵琶湖とその周辺の環境と文化の保全に取り組む方々とお会いしたり・・・。こうして、「食」を中心として、人とのつながりができていっています。

多様性については、最近、食にまつわる有名人、マクロビオティック、ローフード等々が話題になることが増えてきましたが、ひとつのことにガーッと入っていくと、他のものを許したり受け入れたりしなくなってきます。私は、そのような態度はサステナブルではないと考えています。「それもあるけど、これもあるよね」そして「たまには、あれもあるよね」という態度を体現していくことが、多様性であると思います。

次に、食に関して自分が何を大切にしているかを、三つ考えました。

一つめは「楽しむ」「豊かに」「ムリしない」「レスペクトする」という態度です。あまりストイックにやると長続きしませんし、「安全」と言われる食品は価格が高かったり入手に手間がかかったりという難しさもあります。「だいたい」のところで食べて、おいしかったり楽しかったりすればいいと思います。私もさきほどファーストフード店に行きましたが、たまにはいいのではないでしょうか。過去に、ストイックに「自然食」に取り組んだ人をたくさん見てきて、その中には病気になって亡くなった方もいらっしゃいます。「これを一口食べたから、ガンになるかもしれない!」と思う心の方が危険かもしれません。

それと、ストイックでいると、誰かを責めたり排斥したり仲間じゃないと考えたりしてしまう場合があるのも、多様性という視点からは変なことだと思います。

二つめは、「リアリティー」です。これは食に限らず、何に関しても大切だと痛感しています。私のいうリアリティーとは、人から聞いた話、 本で読んだことを頭で理解しているのではなく、実体験を通じてハッとしたり、腑落ちしたりすることです。

例えば、インドにヴァンダナ・シヴァさんという活動家がいらっしゃいます。私は2012年のリオ環境サミットの際に友人がヴァンダナさんのインタビューをしてきて翻訳を頼まれた時に彼女の存在を知り、「この人はすごい!」と思いました。その後、ナマケモノ倶楽部の辻信一さんがヴァンダナさんの『いのちの種を抱きしめて』という映画を制作中だと知って、「おしかけ翻訳」(笑)をしました。ヴァンダナさんはなんとかつて量子物理学者で、インド最初の高速増殖炉開発に関わっていたそうです。その後、180度転換したところに身を置いて、種を守る活動を行なっておられます。ヴァンダナさんによると、「種があれば、私たちはずっと豊かに安心して暮らしていくことができる。種は増えるし、人と分かち合うこともできる」 私はそれを知って、「なるほどなあ」と思いましたが、それは「頭で」理解したにすぎなかったのです。

じつは去年初めて、育てた野菜の種をとってみました。いつもは苗を買ってきて野菜を育てるのですが、今年は種から育てました。それで初めて、畝を立てる理由がわかったり、雑草にまぎれてどれが野菜の芽なのかわからなかったり、発芽しなかったり。それは発芽率や育て方の問題かもしれないし、そもそもそれがF1の種だったからかもしれない。「有機野菜」と言われたものも、種が出ないものもあり、「有機栽培で育てた」ことと「F1ではない」ことは、違うことなのかもしれないと思いました。

もっと瑣末な例として、この春に小松菜・ほうれん草・春菊を育てていました。もちろん農薬はまいていませんが、まったく虫に食べられない、「しめしめ、自然農法(じつは「放置」(笑))だと、虫は喰わない」と自慢げにしていました。野菜が育ち、そろそろ収穫できるかなと思ったある日、虫さんたちがやってきて一気に完食してしまいました。相手もプロですから(笑)、食べる時期をよく知ってるんですね。その数日後に、近所の誰かの畑を通りかかったら、 丸々とした立派なキャベツがずらっと並んでいて、モンシロチョウがたくさん飛んでいるのに、まったく虫喰いがないんです。農薬をまいていからです。それを見た私は、「農薬まきたくなるよね」と、心から思いました。自分は遊びや楽しみでやっているので、栽培に失敗したら買いに行けばいいのですが、職業や時給のために栽培している人は、そうもいかないでしょう。

先ほどお話した琵琶湖の田んぼにお手伝いに行くのも、リアリティーを持てるようになるための一つのきっかけとなりました。実際に体験したり感じたりすると、考え方と行動が変わります。それは、頭でたくさんのことを知っていることと、まったく違うプロセスとなります。

とはいえ、ちょっと田舎に住んでエコ寄りのコミュニティーを持っている私たちと同じようなことを、皆さんがやるのはちょっと難しいかもしれません。ですが、マンションのベランダでちょっと野菜を育ててみることは可能です。そうして「植物さんは、えらいなあ」と思ったり、鳥さんとプチトマトの争奪戦をやってみたり、農家さんの手伝いに行って「農作業って、こんなに暑くて過酷なのか?!」と感じてみたり、なにかしらできることはあるのではないかと思います。

そういうことをちょっとでもやってみると、大切に食べるようになります。大切に感謝して食べれば、体にもいいでしょう。

三つめに大切にしているのは、「体が必要としているものに敏感になる」ということです。そのためには、そのような体でいることが必要ですが、それはかなりハードルが高いかもしれない。

現代人は栄養過多なので、三日くらい食べなくても死にません。でも、「12時になったからお昼食べなきゃ」とか「きのうは中華だったから、きょうは○○」とか、頭で食べている。その一方で、最近は断食道場なんかが流行っています。でもわざわざ断食道場に行くのも大変なので、自分で食べる量をうんと減らしてみるといいです。・・・と言うと、ほとんどの人に「それができるくらいなら、苦労しない!」と言われそうですが(笑)、やってみると気持ちのいいものです。体も軽くなります。もちろん健康効果もあります。自分の体でいろいろ実験してみると、おもしろいですよ。

私は「Being SOLO」という、自然の中で一人きりで過ごしながらひたすら内省していただくというワークショップをやっています。ワークショップの最初にそれぞれの参加者に、無農薬のいい米で作った玄米おにぎりを数個だけ、「好きな時に食べてください」と言ってお渡しします。最初は、「ええ〜〜〜?! ○日間で、これだけ???」という反応が返ってきますが、「意外と辛くないですよ」とお伝えします。そしてワークショップが終わると、ほぼ全員の方が「ほんとうですね。意外と辛くなかった」とおっしゃいます。

先日、宮古島でのBeing SOLOの際、ある方がワークショップ終了時に「これまで“頭で”食べていたことがわかった」と話しておられました。食や断食を目的としたワークショップではないのですが、それも一つの気づきでしょう。ワークショップ中に自由に食べられるおやつも、チョコレートその他のお菓子よりも、ナッツやドライフルーツを好むようになります。ワークショップの最後に簡単な朝食をお出ししますが、ふだんはあまり手が伸びないであろう食品からなくなります。自然の助けを借りて、たった数日で体が喜ぶものを選別できる体に変化できることを見て、ちょっと希望を感じています。

ところで、こんなお話をさせていただいている私ですが、じつは食品についてあまり細々としたことを調べたりしないし、知ろうという気もありません。引っ越すたびに近所に自然食品店があって友達になるから、そこの人たちを信頼している。その人たちが選んだものなら信頼できる、という、ものぐさな方法をとっています。それも先ほどお話した「つながり」ですね。

きょうは、食とサステナビリティーについて、

要素(1)自分のため

要素(2)地球のため

要素(3)つながりと多様性

大切にしていること(1)楽しむ

大切にしていること(2)リアリティー

大切にしていること(3)敏感な体を作る

というお話をさせていただきました。

この他にもほんとうは、遺伝子操作、受粉、外来種、そして最新の「合成生物」と、いろいろお伝えしたいことがありますが、時間がきましたので、これでお話を終わらせて頂きます。ありがとうございました。

 

 

 

食とサステナビリティ

6月26日、NECソリューションイノベータ株式会社の「未来lifeセッション」という対話イベントで、話題提供者として「食とサステナビリティ」をテーマにお話させていただきました。

このグラフィックは、それに向けて頭の中を整理するために描いたものです。

右上の「健康」>「体」の部分は、皆さんふだんから考えておられることなので、詳細は割愛しています。

食とサステナビリティー 160613